暴落時の対処法|感情に流されない投資ルールの作り方
May 25, 2026
はじめに――相場の波は、いつの時代も繰り返されてきた
投資を続けていると、ふとこんな疑問が頭をよぎることはないでしょうか。
「もし相場が大きく下がったとき、自分は冷静でいられるだろうか」
実は、この問いに事前に向き合っておくことが、長期的な資産形成においてとても大切な意味を持ちます。
長い投資の歴史を振り返ると、市場が大きく揺れる局面は定期的に訪れています。
そのたびに多くの投資家が難しい判断を迫られてきました。
重要なのは、そうした局面が来てから慌てるのではなく、穏やかな日常のうちに「自分なりの行動指針」を持っておくことです。
「備えあれば憂いなし」という言葉は、投資の世界にもそのままあてはまります。
相場が落ち着いている今だからこそ、万が一のときの行動方針を整理しておくことができます。
事前にルールを持っている人とそうでない人では、いざというときの判断に大きな差が生まれます。
特に、老後の資産を守りながら増やしていきたいと考えている中高年の方にとって、相場の下落時の対応を誤ることは大きなダメージにつながる可能性があります。
大切なのは、「下落が来てから考える」のではなく、「来る前にルールを決めておく」ことです。
本記事では、過去の実例を参照しながら、感情に流されない投資ルールの作り方を紹介します。
過去の暴落から学ぶ――市場は回復してきた
まず、感情的な行動を防ぐために、過去の暴落の実態を客観的に確認しておきましょう。
リーマンショック(2008年)については、日経平均株価は2008年9月12日の12,215円から、同年10月27日には7,162円90銭(約7,163円)へと約41%下落し、2009年3月10日にはバブル崩壊後の最安値となる7,054円98銭(約7,055円)まで落ち込みました(出典:松井証券「リーマンショックとは?」、楽天証券トウシル)。
一方、米国のS&P500はリーマンショック前の高値を約4年1か月後の2013年3月に回復し、その後も長期的な上昇トレンドを継続しました(出典:三井住友DSアセットマネジメント)。
コロナショック(2020年)では、日経平均が2020年2月21日(急落直前)の終値23,386円から、同年3月19日には16,552円83銭まで約29%下落しました(出典:ニッセイ基礎研究所「コロナショック後の金融市場動向」、三井住友DSアセットマネジメント)。
しかしその後は各国の金融緩和策もあり急速なV字回復を見せ、約5か月半後の2020年9月3日には急落前の水準を回復しています(出典:朝日新聞2020年9月3日)。
これらの事実が示すのは、「暴落は必ず来るが、長期的には市場は回復してきた」という歴史的な傾向です。
もちろん、過去の実績が将来を保証するものではありませんが、この視点を持っているかどうかで、暴落時の行動は大きく変わってきます。
なぜ人は暴落時に感情的になるのか
野村證券金融工学研究センターの大庭昭彦氏(行動ファイナンス専門家)の解説によれば、株価が急落した際に投資家が「狼狽売り(ろうばいうり)」をしてしまう背景には、行動ファイナンスでいう「主観確率」の歪みがあります。
人は低確率の出来事を実際よりも高い確率で起きると感じやすく、「国内外の株式と債券に分散投資したポートフォリオの価値が月に5%以上、下落するような事態が起きる客観的な確率は過去に約3%であるにも関わらず、主観的には約10%に感じてしまう」という現象が確認されています(出典:野村證券EL BORDE「株価が急落しても『狼狽売り』をしない人の特徴」2024年9月)。
つまり、暴落後に「さらに大きな暴落が来るのではないか」という恐怖心は、ある意味で自然な心理反応です。
しかしその感情に従って売却してしまうことが、長期的な資産形成において最も避けたい行動のひとつといえます。
感情に流されない「マイ投資ルール」の作り方
① 投資の目的と目標額を明文化する
最初にすべきことは、「なぜ投資するのか」「何のためにお金を増やしたいのか」を具体的に言葉にしておくことです。
老後の生活費の補填なのか、子や孫への相続を考えてのことなのか、あるいは旅行などの趣味資金なのか――目的が明確であれば、日々の株価の上下動に一喜一憂しにくくなります。
同様に、「〇年後に〇〇万円」という具体的な目標を設定しておくことも有効です。
米国の投資アドバイス会社「SEIインベストメンツ」のデータ(Melissa Doran Rayer[2008]をもとに野村證券金融工学研究センター作成)では、ゴール(目標)を明確にして資産運用していた投資家の75%がリーマンショック時に狼狽売りをせず、さらに20%は投資資金を追加していたことが示されています。
一方、目標を持たずに運用していた投資家の半数が資産全額か株式を全額売却してしまったというデータもあります(出典:野村證券EL BORDE「株価が急落しても『狼狽売り』をしない人の特徴」2024年9月)。
目的と目標の設定は、感情的な行動に対する最初の「防波堤」になります。
② 「暴落時の行動方針」を事前に決めておく
次に重要なのは、「暴落が起きたらどうするか」を平常時にあらかじめ決めておくことです。
たとえば
「ポートフォリオが20%下落したら一部買い増しを検討する」
「積立投資は相場に関わらず継続する」
「売買の判断は年に1〜2回のみ行う」といった具体的な行動方針をルール化しておきます。
アセットマネジメントOne(大手運用会社)も、「あらかじめマイルールを作っておくことで、感情的な判断やパニック売りを避けられる」と解説しています(出典:アセットマネジメントOne「暴落に備えてやっておきたい2つのこと」2024年)。
ルールがあれば、いざ暴落が来たとき「このケースは想定済み」と受け止められ、冷静な判断を保ちやすくなります。
③ 分散投資でリスクを構造的に抑える
感情的な行動を防ぐもうひとつの有効な手段が「分散投資」です。
「卵はひとつのカゴに盛るな」という有名な格言どおり、複数の資産クラス(株式・債券・不動産など)や地域(国内・海外)に分散していれば、ひとつの市場が暴落しても資産全体へのダメージを和らげることができます。
中高年の方の場合、残りの投資期間を考慮し、株式だけでなく債券や現金・預貯金など安全性の高い資産も一定割合で保有しておくことが一般的に重要とされています。
金融庁も、「長期・積立・分散投資を組み合わせることで、安定的な資産形成が期待できる」と案内しています(出典:金融庁NISAウェブサイト)。
④ 積立投資の「自動化」を活用する
積立投資には、感情的な判断を介さないという大きなメリットがあります。
毎月一定額を自動的に投資する仕組みを作れば、暴落時でも機械的に購入が継続されます。
これにより「ドル・コスト平均法」の効果(価格が下がったときに口数を多く購入できる)も働きやすくなります。
SBI証券のシミュレーションでは、リーマンショック時にS&P500への積立投資を継続したケースは、積立を中断したケースと比べて投資元本回復までの期間が約半分(18カ月対42カ月)になったという試算が示されています(出典:SBI証券「過去の下落相場から考える積立投資の有効性」2025年)。
なお、これはあくまで過去データに基づくシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではありません。
⑤ 暴落時は「情報から距離を置く」ことも一手
暴落時にはSNSや経済ニュースが「さらに下がる」という悲観的な情報であふれかえります。こうした情報を見続けることで、恐怖心はさらに増幅されます。
「数日間、投資関連の情報から意識的に離れる」「読書や趣味に時間を使う」といった対処法も、感情的な行動を防ぐうえで実際に有効とされています(出典:SBI証券「初級-暴落時に、やらなくていいことから考える投資」)。
中高年が特に意識したいポイント
中高年の方が暴落時に注意すべき点は、「老後資金として使う時期が迫っている」という現実です。
若い世代であれば回復を長期間待つことができますが、中高年では投資の残り期間を踏まえた現実的な資産配分と、生活費として必要な現金を投資に回さないという原則が特に重要になります。
「生活防衛資金は別途確保した上で、余裕資金だけで投資する」というルールを守ることが、暴落時に慌てないための根本的な備えです。
まとめ
暴落時に感情的な判断をしないためには、「来てから考える」ではなく「来る前に備える」ことが何より大切です。
本記事で紹介した内容を整理すると、投資目的・目標額の明文化、暴落時の行動方針の事前ルール化、資産・地域の分散、積立投資の自動化継続、そして情報から距離を置く選択肢という5つのポイントが、感情に流されない投資の柱となります。
歴史的に見ると、市場は暴落を繰り返しながらも長期的には回復・成長を遂げてきました。
過去の事実を知識として持ち、あらかじめルールを整えておくことが、資産を守り育てる投資家としての姿勢の第一歩です。
【注意事項】
本記事は、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品・投資信託・株式等への投資を勧誘・推奨するものではありません。投資にはリスクが伴い、投資元本が保証されるものではありません。株式や投資信託等の価格は市場環境等により変動し、投資元本を下回る場合があります。
記載されている過去の市場データや回復実績は過去の事実に基づくものであり、将来の運用成果・市場の動向を示唆・保証するものでは一切ありません。
投資に関するご判断は、ご自身の投資目的・リスク許容度・資産状況・投資経験等を十分にご確認のうえ、最終的にはご自身の責任においてお決めください。具体的な投資に関するご相談は、金融商品取引業者(証券会社、銀行等)や、ファイナンシャルプランナー(FP)等の専門家にご相談されることをお勧めします。
本記事に掲載している情報は、2025年5月時点のものです。法律・制度の改正等により内容が変更となる場合があります。最新情報は各関係機関の公式情報をご確認ください。
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