投資したい米国株の見つけ方 ─ 何を見て探す? 売上・利益・PERなど最低限の数値基準入門
Jul 13, 2026
はじめに
米国株への関心が高まっている理由
近年、老後の資産形成を意識する中高年の方々を中心に、米国株(アメリカ株)への関心が着実に高まっています。その背景にあるのが、米国を代表する株価指数「S&P500」の長期的な成長実績です。アップルやマイクロソフト、エヌビディアなど世界的な大企業を多数擁する米国株市場は、過去数十年にわたって長期的な右肩上がりの傾向を示してきました。SMBC日興証券がBloombergのデータをもとにまとめた資料によれば、1970年から2024年までの54年間でS&P500のEPS(1株当たり純利益)の年平均成長率は約7.21%に達し、前年比でマイナスになった年はその期間でわずか16回にとどまっています。
とはいえ、「どの銘柄を選べばいいかわからない」「財務の数字を見ても何が何やら」という方も多いのではないでしょうか。本記事では、米国株の銘柄を探す際に最低限押さえておきたい数値基準をわかりやすく紹介します。難しい専門知識がなくても、いくつかの指標を理解するだけで、銘柄選びの視野がぐっと広がります。
まず「どんな会社か」を知ることから始める
数値を見る前に、大前提として「何をしている会社か」を理解することが出発点です。自分が普段使っているサービスや商品を提供している企業、あるいは世界中で需要が見込める事業を手掛ける企業に目を向けると、ビジネスモデルのイメージがしやすくなります。
たとえば、スマートフォンを手掛けるアップル(AAPL)、検索やクラウドサービスのアルファベット(Googleの親会社・GOOGL)、Eコマースとクラウドのアマゾン(AMZN)などは、多くの中高年の方にもなじみのある企業でしょう。「なんとなく聞いたことがある」という企業から調べていくと、数字を読む際にもイメージしやすく、学習が長続きしやすいといえます。
① 売上高と売上高成長率 ─ 企業が「稼ぐ力」を持ち続けているか
財務指標のなかで最も基本となるのが「売上高(Revenue)」です。
売上高とは、企業がその期間に製品やサービスを販売して得た収入の合計で、事業規模をシンプルに示す数字です。
重要なのは、売上高そのものの大きさよりも「毎年伸び続けているかどうか」です。これを「売上高成長率」と呼びます。計算式は以下のとおりです。
売上高成長率(%)=(当期売上高 - 前期売上高)➗ 前期売上高 ✖️ 100
一般的な目安として、年率10%以上の増収を継続的に実現している企業は、市場から高い成長性を評価される傾向にあります。逆に、売上高が横ばいや減少傾向が続く企業は、事業の競争力や市場環境に何らかの課題を抱えている可能性があります。過去3〜5年にわたって売上が着実に伸びているかどうかを確認する習慣をつけると、候補銘柄の絞り込みに役立ちます。
② 営業利益と営業利益率 ─「本業でちゃんと儲けているか」を見る
売上高が伸びていても、それだけでは企業の実力は測れません。売上から原材料費・人件費・販売費などの事業コストを差し引いた「営業利益」こそが、本業でどれだけ稼げているかを示す数字です。
さらに重要なのが「営業利益率」です。
営業利益率(%)= 営業利益 ➗ 売上高 ✖️ 100
松井証券のコラムによれば、経済産業省の2024年の調査(日本企業対象)で全体平均が4.8%であることを踏まえ、5%前後が一つの標準的な水準とされています。ただし、これは日本企業を含む全業種平均であり、米国の有力企業では水準感が大きく異なる点に注意が必要です。FactSetの最新データ(2026年6月時点)では、S&P500の情報技術(IT)セクターの純利益率は30%を超えており、決済サービスのビザ(V)やマイクロソフト(MSFT)など一部の優良企業では、営業利益率が20〜60%台に達するケースも珍しくありません。このように業種によって水準は大きく異なるため、同じ業種・業態の企業同士で比較することが非常に重要です。
継続して高い利益率を維持している企業は、独自技術やブランド力、ネットワーク効果など「競争上の強み」を持っている可能性が高く、長期投資の観点から注目に値します。
③ EPS(1株当たり純利益)─「投資家への還元力」がわかる数字
EPS(Earnings Per Share=1株当たり純利益)は、企業が最終的に得た純利益を発行済み株式数で割った数値です。
EPS = 当期純利益 ➗ 発行済み株式数
EPSが継続的に増加している企業は、着実に利益を拡大していることを示しており、株主への利益還元力が高いと評価されます。SMBC日興証券の資料によれば、S&P500構成企業全体のEPSは長期的に増加傾向にあり、1970年から2024年の54年間での年平均成長率は約7.21%を記録しています。
逆に、売上が増えているのにEPSが伸び悩んでいる場合、コスト増加や株式の希薄化(新株の大量発行)が起きている可能性があるため、注意が必要です。決算ごとのEPSの推移を数年分チェックするだけでも、企業の収益体質をある程度判断できます。
④ PER(株価収益率)─「今の株価は高いか、安いか」の目安
PER(Price Earnings Ratio=株価収益率)は、現在の株価が1株当たり純利益(EPS)の何倍で取引されているかを示す指標で、株価の割高・割安感を判断する際に広く使われています。
PER(倍)= 株価 ➗ EPS(1株当たり純利益)
PERの参考水準を理解するうえで、歴史的な平均値を知っておくことは大切です。米国の投資調査会社FactSetの最新レポート(2026年6月26日時点)によれば、S&P500の予想PER(フォワードPER)は20.1倍で、5年平均は19.9倍、10年平均は19.0倍となっています。国内の証券会社や金融メディアでは「PERの目安は15倍」と紹介されることがありますが、これは日本株に言及される文脈が多く、米国株の直近10年平均は約19倍前後と、やや高い水準で推移している点を念頭に置く必要があります。
PERが市場平均や同業他社に比べて極端に高い場合は、すでに高い成長期待が株価に織り込まれている状態といえます。一方で、PERが低い場合でも、業績悪化への懸念を反映している可能性があるため、「PERが低い=お買い得」とは一概に言えません。重要なのは、PERが高い・低い「理由」を他の指標と組み合わせて読み解くことです。また、PERは業種によって水準が大きく異なるため、必ず同じ業種・業態の企業同士で比較するようにしましょう。
数値を調べるための無料ツール
米国株の財務情報は、以下のような無料ツールで手軽に確認できます。
⚫︎Yahoo!ファイナンス(finance.yahoo.co.jp)
日本語で使いやすく、米国株の株価・業績・財務情報をまとめて確認できます。初めての方にも使いやすい入り口です。
基本的な機能を無料で利用できますが、詳細な情報や一部の機能については有料サービスへの登録が必要な場合もありますので、最新の料金体系や機能の詳細はYahoo!ファイナンスの公式サイトでご確認ください。
⚫︎SBI証券・楽天証券・マネックス証券の米国株スクリーナー
各社の証券口座を開設していれば無料で利用でき、PERや売上高成長率などの条件を入力して銘柄を絞り込む「スクリーニング」が可能です。
⚫︎FINVIZ(finviz.com)
米国の代表的なスクリーニングツールで、財務指標・テクニカル指標など多彩な条件で銘柄を検索できます。英語のみのサイトで株価データに15分の遅延がありますが、無料で利用できます。
これらのツールを活用することで、膨大な米国株の中から自分なりの基準に合う候補をある程度絞り込むことができます。
まとめ
米国株の銘柄を探す際の基本的な数値基準を整理すると、次の4点が入口となります。まず「売上高成長率」で事業が伸び続けているか確認し、次に「営業利益率」で本業の稼ぐ力を見極めます。このとき利益率の水準は業種によって大きく異なるため、必ず同業他社と比較することが大切です。続いて「EPS(1株当たり純利益)」の推移で利益の拡大が続いているかを把握し、最後に「PER」で現在の株価水準が市場平均(米国株の直近10年平均は約19倍)や同業他社と比べて適切かどうかを判断します。
これら4つの指標を組み合わせることで、ただ話題の銘柄を追いかけるのではなく、数字の根拠を持って銘柄候補を選べるようになります。年を重ねた方にとって大切なのは、短期間で大きなリターンを狙うことよりも、長期的に着実に資産を育てる視点を持つことです。まずは「なじみのある会社」から財務情報を調べる習慣を少しずつ始めてみてください。数字を読むことへの抵抗感が薄れ、投資の世界への理解が自然と深まっていくはずです。
【注意事項】
本記事は、米国株投資に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品や銘柄への投資を推奨・勧誘するものではありません。投資にはリスクが伴い、投資元本が保証されるものではありません。株式投資では、市場環境の変化、企業業績の悪化、為替変動などにより、投資した資産が減少する可能性があります。本記事に記載された数値や情報は、記事作成時点において信頼できると判断した情報源(FactSet、SMBC日興証券、松井証券、日本経済新聞等)をもとに整理したものですが、その正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際の投資判断は、ご自身の責任において行っていただき、必要に応じて金融商品取引業者や専門家にご相談ください。本記事は、金融商品取引法上の投資助言・投資一任業に該当するサービスではありません。
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