熱中症は外より家が危ない?|見落としやすいサインと正しい対処法
Jul 17, 2026
はじめに
「外にいないから大丈夫」は思い込みかもしれません
「熱中症は炎天下の屋外で起きるもの」
そう思っている方は少なくないはずです。
ところが最新のデータを見ると、その常識は大きく揺らぎます。熱中症で救急搬送される方の最多の発生場所は「屋外」ではなく「住居(家の中)」なのです。年齢を重ねた方にこそ知っておいていただきたい、この"新常識"について、データとともにわかりやすくお伝えします。
最新データが示す衝撃の事実
総務省消防庁が発表した「令和7年(2025年)5月〜9月の熱中症による救急搬送状況(確定値)」によると、2025年の熱中症による救急搬送人員は調査開始以来過去最多となる 100,510人にのぼりました。
発生場所別のトップは「住居」で 38,292人(全体の38.1%)。次いで「道路」が19,773人(19.7%)、「公衆(屋外)」が12,175人(12.1%)と続きます。道路と屋外の合計(約32%)よりも自宅内での発生のほうが多く、熱中症で搬送された人のおよそ5人に2人は"家の中"で倒れていたことになります。
さらに年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が 57,433人(57.1%)と全体の半数以上を占めており、年齢を重ねた方ほど熱中症のリスクが高いことが数字からも明確に示されています。
なぜ「家の中」が危ないのか? -加齢と身体の変化-
年齢を重ねると、なぜ室内での熱中症リスクが高まるのでしょうか。その背景には、加齢に伴うさまざまな身体機能の変化があります。
暑さを感じにくくなる
加齢により皮膚の温度センサーの感度が低下するため、気温が上昇していても「暑い」とはっきり感じにくくなります。自律神経の働きも衰えることで、発汗・血流調整といった体温調節機能が若い頃より大幅に低下します。室温が30℃を超えていても「少し暖かいかな」程度にしか感じないケースも珍しくありません。
のどの渇きを感じにくくなる
環境省「熱中症環境保健マニュアル」でも指摘されているように、加齢によってのどの渇きを感じる機能が低下するため、体が脱水状態に近づいていても気づきにくくなります。加えて、体内の水分量そのものが若い頃より少なくなっているため、わずかな水分不足でも熱中症に傾きやすい状態にあります。
エアコンを使わない・使い慣れていない
「電気代がもったいない」「冷えすぎが体に悪い」「昔はエアコンなしで過ごせた」といった理由から、窓を開けるだけで過ごす方も多くいます。しかし現在の夏の暑さは以前とは比べものにならないほど厳しく、窓開けだけでは室温の上昇を防げないケースがほとんどです。
見落としやすい! -室内熱中症のサイン-
室内での熱中症が怖いのは、「いつの間にか進行する」という点です。屋外のように急に倒れるのではなく、じわじわと症状が進むため、本人も周囲も気づきにくいのです。
本人が気づきにくいサイン
- 体がだるい、なんとなく疲れている感じがする(倦怠感)
- 食欲がない、食事がすすまない
- 頭がぼんやりする、集中できない
- 足がつる、筋肉がこわばる感じがある
- 口の中が乾いている(のどの渇きを感じていなくても要注意)
- めまい・立ちくらみがする
- 朝、いつもよりなかなか起き上がれない
周囲の人が気づけるサイン
- いつもより元気がなく、ぼーっとしている
- 呼びかけへの反応が鈍い、返答がおかしい
- 顔が赤い(または青白い)
- 汗をかいていないのに顔が赤く体が熱い
「汗をかいていないのに体が熱い」「意識がもうろうとしている」という状態は重症化のサインです。すぐに涼しい場所へ移動させ、体を冷やしながら迷わず救急車を呼んでください。また厚生労働省の資料では、住居内の熱中症は「居間・リビング」に次いで「寝室・就寝中」での発生が多く報告されており、夜間や就寝中も油断は禁物です。
今日から実践できる -室内熱中症の予防策-
室温の管理を最優先に
環境省は室温を28℃以下に保つことを推奨しています。エアコンを26〜28℃程度に設定し、直接風が当たらないよう工夫すれば体への負担も抑えられます。就寝中もタイマー機能などを活用して、室温が上がりすぎないよう管理しましょう。
こまめな水分補給を習慣に
のどが渇いてから飲むのではなく、「渇く前に、定期的に」飲むことが大切です。環境省は1日約1.2リットルの水分補給を目安としています。ただし、持病(腎臓病・心臓病など)をお持ちの方は、水分摂取量について事前にかかりつけ医にご相談ください。汗をかいた日は塩分も失われるため、味噌汁やスポーツドリンクで補うことも有効です。
温湿度計を活用する
「暑いかどうか」を感覚だけで判断するのは危険です。室内に温湿度計を置き、気温・湿度を数字で確認する習慣をつけましょう。気温が低くても湿度が高い日は体感温度が大幅に上がり、熱中症のリスクが高まります。
定期的に様子を確認し合う
一人暮らしの方は特に注意が必要です。家族や近所の方と定期的に連絡を取り合い、異変があればすぐに気づける仕組みをつくっておくことが、命を守ることにつながります。
熱中症の症状が出たら -正しい対処法-
まず意識を確認する
対処の第一歩は、呼びかけに反応があるかどうかの確認です。
⚫︎状態:呼びかけに応じ、自力で水が飲める
対応:現場で応急処置
⚫︎状態:吐き気・嘔吐がある、症状が改善しない
対応:医療機関へ搬送
⚫︎状態:反応がおかしい・意識がない
対応:即座に119番
⚠️ 意識がない・反応がおかしい場合はすぐ救急車を呼んでください。
到着を待つ間も体を冷やす処置は続けます。
涼しい場所に移し、衣服を緩める
屋外なら日陰・風通しの良い場所へ、屋内ならエアコンの効いた部屋へすぐに移動させます。
ベルトや衿元を緩め、うちわ・扇風機で体に風を当てましょう。
正しい部位を冷やす
体表近くに太い血管が通っている場所を冷やすのが最も効果的です。
環境省マニュアルが推奨する「三大局所冷却部位」は以下の3か所です。
保冷剤・氷のう・冷えたペットボトルをタオルで包んで当てましょう。
⚫︎首の前面の左右(前頸部)
⚫︎両脇の下(腋窩部)
⚫︎脚の付け根の前面(鼠径部)
濡れタオルを全身に当てて扇風機で扇ぐ方法も有効です。屋外で水道が使える場合は、ホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」も環境省マニュアルで推奨されています。
❌ 「冷却ジェルシートを額に貼る」のは熱中症には効果がありません(環境省マニュアルより)。
体温を下げる効果がなく、誤った安心感につながる場合があります。
姿勢について
意識があり自力で座れる場合は楽な姿勢で座らせます。
体がだるくて座れない場合は足を少し高くして仰向けに寝かせましょう。
意識がない・嘔吐している場合は、誤嚥・窒息を防ぐため横向き(回復体位)にして気道を確保してください。
水分・塩分の補給
意識があり自力で飲める場合のみ、冷たい水・スポーツドリンク・経口補水液を飲ませます。冷たい飲み物は胃の表面から体の熱を奪う効果もあり、水分補給と冷却を同時に行えます。大量に汗をかいている場合は、塩分も補えるスポーツドリンクや経口補水液が適しています。
❌ 意識がない・吐き気・嘔吐がある場合は、絶対に無理やり飲ませてはいけません。
気道に流れ込み窒息の危険があります。点滴による医療処置が必要です。
まとめ
「外に出ていないから安心」は、もはや通じない時代です。2025年の消防庁データは、熱中症の最多発生場所が「住居(家の中)」であることを改めて明確に示しています。年齢を重ねた方は、暑さやのどの渇きを感じにくくなる身体の変化により、気づかないうちに危険な状態に近づいていることがあります。「こまめに水を飲む」「室温を計測してエアコンを適切に使う」という習慣を今日から始め、もし熱中症のサインに気づいたら「意識の確認→涼しい場所へ移す→体を冷やす→水分補給」の順で落ち着いて対処してください。意識がない・反応がおかしい場合は、迷わず119番に連絡することが命を守る最善の行動です。
【注意事項】
本記事は、消防庁・環境省「熱中症環境保健マニュアル」・厚生労働省・日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」の公開資料をもとに、一般的な健康情報の提供を目的として作成したものです。特定の個人の症状・状態に対する医学的診断や治療の推奨を目的とするものではありません。体の不調や熱中症が疑われる症状が現れた場合は、速やかにかかりつけ医や医療機関にご相談ください。水分摂取量は持病・服薬状況によって適切な量が異なる場合があります。心配な方は必ず医師にご確認ください。本記事の情報は掲載時点のものであり、今後変更される可能性があります。
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