「水分を摂っているのにだるい」のはなぜ?|隠れ脱水の新常識
Jun 19, 2026
はじめに
「毎日ちゃんと水を飲んでいるのに、なんとなくだるい」
「疲れが抜けない」
「頭が重い」
そんな経験はありませんか。
実はこれ、「水分不足とは無縁」と思っている中高年に意外と多い悩みです。
今回取り上げる「隠れ脱水(かくれ脱水)」は、のどが渇いたという自覚がないまま体の水分バランスが崩れ始めている状態のことです。
「水を飲んでいるから大丈夫」という思い込みが、かえって対処を遅らせてしまうケースも少なくありません。この記事では、隠れ脱水の仕組みと見極め方、そして中高年が実践しやすい対策を、信頼できる医学情報をもとにわかりやすくお伝えします。
「隠れ脱水」とは何か?
脱水と「隠れ脱水」の違い
脱水というと、真夏の炎天下で倒れるといったイメージが浮かぶ方も多いかもしれません。しかし医療の現場では、そこまで深刻になる前の段階として「隠れ脱水」という概念が確立されています。これは、体の水分量が体重比で約2%程度失われており、本人も周囲も気づかないまま脱水状態に近づいていることを指します。
この段階では、強いのどの渇きや立ちくらみといった典型的な脱水症状はまだ現れません。そのため「自分は大丈夫」と感じてしまうのです。
実際には、なんとなくだるい・疲れやすい・眠い・頭が重い・食欲がないといった、日常的によくある不調として現れるのが特徴です。
体の水分は「年齢とともに」少なくなっている
もうひとつ知っておきたい大切な事実があります。体内に含まれる水分の割合は、年齢とともに低下していきます。成人(若年層)では体重の約60%が水分ですが、65歳以上になると約50%まで下がるとされています。
なぜ減るのかというと、加齢に伴って筋肉量が減少するためです。
筋肉は水分を多く含む組織ですが、脂肪組織は筋肉に比べて水分含有量が少ない。加齢とともに筋肉が脂肪に置き換わると、体全体の水分貯蔵能力も下がっていくのです。つまり、中高年の体は「構造的に水分が不足しやすい状態」になっているといえます。
「水分を摂っているのに」なぜ、だるくなるのか?
水だけでは補えない「電解質」の問題
ここが最も見落とされがちな「隠れ脱水の新常識」です。
体液は、単純な「水」ではありません。ナトリウム・カリウム・クロールなどの電解質(ミネラル成分)を含んだ液体です。この電解質が体内の水分バランスを保ち、細胞の働きを支えています。
水やお茶を飲むだけでは、こうした電解質を補うことができません。むしろ、大量に水だけを飲んだ場合、体液中の塩分濃度が薄まり、体がバランスを取ろうとして余分な水分を尿として排出してしまいます。その結果、水を飲んでいても実質的な水分補給にならないという状況が起こりえます。
つまり「水を飲んでいるのにだるい」という状態は、水分摂取量の問題だけでなく、電解質(特にナトリウム)が不足していることで体が水分をうまくキープできていないサインである可能性があるのです。
年齢を重ねると「のどの渇き」を感じにくくなっている
さらに深刻なのが、加齢によって「のどが渇いた」という感覚自体が鈍くなることです。のどの渇きを感じる働きを担う脳の口渇中枢(視床下部)の機能が加齢とともに低下するため、体が水分不足の状態になっていても自覚しにくくなります。
「のどが渇いていないから大丈夫」という判断が、中高年には通用しないのです。
これが「隠れ」という言葉がついている理由のひとつでもあります。
隠れ脱水が引き起こす体の不調
隠れ脱水を放置すると、以下のような症状が徐々に現れてきます。
体液が不足すると、特に脳・消化器・筋肉の3か所に影響が出やすいとされています。
⚫︎脳への影響:頭痛、集中力の低下、日中の強い眠気
⚫︎消化器への影響:食欲不振、腹部の不快感、胃もたれ
⚫︎筋肉への影響:体に力が入りにくい、筋肉痛、足がつる
さらに重大なのが、脱水状態になると血液中の水分が減って血液が「ドロドロ」と濃くなり、血栓ができやすくなるという点です。これが脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める要因にもなり得ます(出典:国立循環器病研究センター、サワイ健康推進課)。だるさや頭痛という「ありふれた不調」の裏に、こうした深刻なリスクが潜んでいることを覚えておいてください。
今日からできる!隠れ脱水のセルフチェック
手の甲をつまんでみる
隠れ脱水を簡単に確認する方法として、医療現場でも用いられる「ツルゴール反応(皮膚弾力テスト)」があります。
手の甲の皮膚をつまみ上げ、パッと離したときに、跡が元に戻るまでの時間を確認します。通常は2秒以内に元に戻りますが、2秒以上かかる場合は脱水の疑いがあるとされています(出典:鶴巻温泉病院・はせがわクリニック等、医療機関情報)。
ただしこれはあくまで一つの目安であり、加齢による皮膚のたるみなど個人差もあるため参考程度にとどめてください。
尿の色を確認する
尿の色も、水分状態を手軽に確認できるセルフチェックの方法です。正常な尿の色は「薄い黄色〜淡黄色(麦わら色)」とされており、これは尿に含まれるウロビリンという物質の色によるものです。
尿の色が濃い黄色やオレンジ色に近づいてきたら水分不足のサインです。さらに麦茶のような茶褐色になっている場合は、脱水がかなり進んでいる可能性がありますので、早めに水分補給をしましょう。
その他のチェックポイント
短期間での体重の急な変化(減少)、口の中の粘つき、便秘の悪化なども隠れ脱水のサインとして挙げられています。
正しい水分補給の「新常識」
1日の目安と飲み方の工夫
厚生労働省の資料によると、人間は1日に約2.5Lの水分を必要とするとされています。この内訳は、食事から約1.0L、体内で作られる代謝水が約0.3L、そして飲み物として約1.2Lが目安です。まずは飲み物から1日1.2L程度を意識して補給することを心がけましょう(出典:厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進資料)。
大切なのは「一度にまとめて飲まない」こと。一度に多量の水分を摂っても吸収されずに排出されてしまいます。
コップ1杯(約200ml)を1日に6〜8回、2〜3時間おきにこまめに飲む習慣が効果的です。
特に意識したい「飲むタイミング」
水分補給において、タイミングも重要です。就寝中も汗や呼気によって水分が失われているため、起床直後にコップ1杯の水を飲むことがまず大切です。また、入浴の前後は想像以上に汗をかくため、前後どちらも水分補給を意識しましょう。さらに、睡眠中は長時間水分補給ができないことから、就寝前の一杯も習慣にしたいところです。
飲み物の選び方と電解質補給の工夫
水やお茶だけでなく、電解質(塩分・ミネラル)を意識した飲み物の選び方も大切です。
目的と体調に合わせた選択の目安を以下にご紹介します。
麦茶(日常の水分補給向き)
ノンカフェインで、カリウムなどの微量ミネラルを含みます。カフェインによる強い利尿作用がなく、就寝前や夜間でも飲みやすいのが特徴です。ただしナトリウム(塩分)はほぼ含まれないため、大量に汗をかいた場面での塩分補給としては不十分です。普段の水分補給の基本として活用しましょう。
スポーツドリンク(軽い発汗・運動後向き)
ポカリスエット・アクエリアスなどは、ナトリウムやカリウムを含み、発汗後の電解質補給に役立ちます。日本スポーツ協会のガイドラインでは、水分補給に適した飲料の目安として「100mlあたりナトリウム40〜80mg、糖質3〜8%程度」が示されており、代表的な製品はこの範囲に収まっています。ただし糖質も含まれるため、飲みすぎには注意が必要です。
経口補水液(脱水症状が疑われるときのみ)
経口補水液(OS-1など)は、薬局・ドラッグストア等で医師の処方なく購入できる市販品です。ただし、消費者庁・メーカーともに「脱水症状のときに飲むものであり、日常的な水分補給として使用するものではない」と明示しています。
日常的・大量に飲み続けると、ナトリウムやカリウムの過剰摂取につながり、血圧や心臓に負荷がかかるおそれがあります。また、高血圧・腎臓病・糖尿病・心疾患などの持病があり、塩分・カリウム・糖質の摂取を制限されている方は、飲む前に必ずかかりつけの医師にご相談ください(出典:消費者庁、OS-1公式FAQ)。
食事からの補給(みそ汁・スープ・野菜類)
飲み物だけでなく、食事からの水分・電解質補給も効果的です。薄めのみそ汁や野菜スープは水分とナトリウムを同時に補える実用的な方法です。また、キュウリ・トマト・レタスなど水分を多く含む野菜も積極的に取り入れましょう。ただし、塩分制限のある方はみそ汁の飲みすぎにご注意ください。
まとめ
今回の記事のポイントを振り返ります。
- 「隠れ脱水」は、自覚症状がないまま体の水分が体重比で約2%程度失われ始めている状態で、だるさ・頭痛・眠気・食欲不振などの不調として現れることがある
- 中高年は加齢によって体内の水分量(体重比で約50%)が少なくなっており、脳の口渇中枢の機能低下によってのどの渇きも感じにくくなっているため、特に注意が必要
- 「水を飲んでいるのにだるい」のは、水だけでは補えない電解質(ナトリウムなど)の不足が原因の一つである可能性がある
- のどが渇く前に、こまめな水分補給を習慣化することが基本。飲み物から1日約1.2Lを目安に、食事と合わせて電解質も意識して補う
- 飲み物は目的に応じて使い分けることが大切。日常は麦茶、発汗後はスポーツドリンク、脱水症状が疑われるときは経口補水液、というのが基本の考え方
- 尿の色(薄い黄色〜淡黄色が正常)や手の甲のツルゴール反応(2秒以内に戻るか)で、日常的にセルフチェックする習慣をつけることが大切
「なんとなく続く体の不調」を「年齢のせい」とかたづけず、隠れ脱水という視点を持つことが、健康な毎日の第一歩になるかもしれません。
【注意事項】
本記事は、一般的な健康情報の提供を目的として作成したものであり、特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。記事内の情報は、公開時点において信頼できると判断した情報源(厚生労働省、消費者庁、済生会、国立循環器病研究センター、日本医師会等)をもとに作成していますが、医学・医療の情報は常に更新されるものであり、最新の情報と異なる場合があります。
体調に不安がある方、持病のある方(特に心臓病・腎臓病・高血圧・糖尿病などで服薬中の方)は、水分補給の方法・量・飲み物の種類について、必ずかかりつけの医師または医療専門家にご相談ください。自己判断による過度な水分摂取や電解質の補給は、健康状態によっては逆効果になる場合があります。
本記事の情報を参考にした行動によって生じたいかなる不利益・損害についても、当ブログは責任を負いかねます。体調の変化が気になる場合は、早めに医療機関を受診されることをお勧めします。
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